レンジローバーに乗って強く感じるのは、世の中にSUVは数あれど、レンジローバーだけは他に代わるものがないということ。歴史、質感、実用性が、地位を確立させたのだ。
INDEX
レンジローバーの辿ってきた道は
ブリティッシュ・レイランドの1ブランドとしてランドローバーから生まれたレンジローバー(まだ少しややこしい?)。
ランドローバーが完全なオフロード・パーパスであったのに対し、レンジローバーにはオフロード性能を担保しつつ、オンロードでの快適性の両立を目標にして開発された。
クラシック・レンジ、あるいはレンジローバー・クラシックとして親しまれる初代は1970〜1996年にかけて販売された。
ロイヤル・ファミリーもレンジローバーを愛用。パリ・ダカール・ラリーで結果を残していたことからも、当時の目的がうかがえる。
2代目は1995〜2002年にかけて販売された。セカンド・レンジなどと呼ばれ親しまれているこの世代は、アメリカ志向。この時期は親会社がBMWになったこともあり、ガソリンエンジンが引き続きローバー製であったのに対し、ディーゼルエンジンはBMW製となった。
例えばシフトレバー1つとっても、アメリカの顧客の慣習を取り入れたものになっており、そのあたりはいつか試乗する機会があれば、掘り下げてみるのも面白いかもしれない。
そして3代目。2002年に登場した。2000年にはBMWがランドローバーをフォードに売却。2008年にはフォードからタタ・モーターズ(インド)へと渡った。従って3代目は、3社の親会社を跨いで開発・販売された。2008年にはレンジローバー→レンジローバー・ヴォーグへと名前を改めている(日本市場)。
パワートレインは同じフォード傘下だったジャガーとスーパーチャージャー付き4.2リッターV8/自然吸気4.4リッターV8を共有していたが、2009年にはスーパーチャージャー付き5リッターV8と自然吸気5リッターV8に。今も続く「オートバイオグラフィー」というグレード名が加わったのも2010年である。さらに2015年には4人乗りの最上級車も加わった。
振り返ってみると、親会社によってその時々の生きる術が製品に反映された車ともいえよう。
基本的に周りの車は小さい。私よりも高い視線の車はトラックくらいしかない。外の音も殆ど聞こえない。悠々と走っていると、少し挑発的な追い越しをしてくる元気な車の元気なお兄さんがいたけれど「苦しゅうない」。普段使わない言葉たちが自然と(?)口を衝く。これをゆとりと、穏やかというのか…。車によって、気の持ちようが変わることを実感する。
3リッターV6は、あらゆる速度域でも大人しい。V8が恋しくなるかな、という当初の予想を覆した。この性格の車にマッチしている。
マッチしていると思えたもうひとつの理由としてスローなステアリングがある。どの速度域でもスローなステアリングと巨体のおかげで、あまり急ごうと言う気になれないし、実際急ぐような運転が多いならばレンジローバー・スポーツの方が向いている。だからエンジンの刺激も、特に求めないのである。
とはいえ340psと450Nm。必要にして十分以上パワーユニットだといえる。V8スーパーチャージャーに比べると燃費もリッターあたり2.7km(=8.5km/L)向上しているし、CO2低減も叶えているという。途端にV8がトゥーマッチに感じるほどの、レンジローバーという車にマッチしたものだと感じた。
ポルシェ911かレンジローバーか
乗れば乗るほど、もっと乗っていたい…と思える。それは控えめながらも最上級に豪奢であり、心にゆとりをもたせてくれる快適性があるからだ。そしていざという時の絶対的な安心感がもたらしてくれる余裕ゆえである。
考えてみると、レンジローバーはいつだってそうだった。
なお筆者は既に5代目にもたっぷりと乗る機会があった。4代目に乗ると「これ以上があるのか」と思えたけれど、5代目は「まだまだ進化の余地があったのだな」と思わせてくれた。
考え方を変えると、コンセプトが一貫しているからこそ、各世代間の進化を探求する楽しみが生まれるのではあるまいか。そんな車はポルシェ911か、レンジローバーくらいしかない。
現在5代目(現行)レンジローバーは、長いもので3年待ちの列になっているという。新車が来るまでの間、4代目を敢えて楽しんでみるというのは面白いかもしれないと思った。いや、それくらいの心持ちで向き合える人にこそレンジローバーはうってつけかもしれない。
SPEC
ランドローバー・レンジローバー3.0 V6スーパーチャージド
- 年式
- 2016年
- 全長
- 5005mm
- 全幅
- 1985mm
- 全高
- 1865mm
- ホイールベース
- 2920mm
- トレッド(前)
- 1700mm
- トレッド(後)
- 1690mm
- 車重
- 2340kg
- パワートレイン
- 3リッターV型6気筒スーパーチャージャー
- エンジン最高出力
- 340ps/6500rpm
- エンジン最大トルク
- 450Nm/3500rpm
- サスペンション(前)
- ダブルウィッシュボーン
- サスペンション(後)
- マルチリンク
- タイヤ(前)
- 255/55 R20
- タイヤ(後)
- 255/55 R20