街を移動していると、カクカクした、いかにもタフなジープ・ラングラーをよく見る。どこか皆、楽しそうだ。なぜ多くの人が好んで乗っているのか。試乗で魅力を検証した。
そんなラングラーの先祖はウィリスMBという軍用車であった。1941年の登場であった。
直系の祖としては1987年にデビューしたYJ型まで遡る。CJ(シビリアン・ジープ=民生仕様)の後継として、角型ヘッドライトや中腹に折り目のある7スロットグリルが特徴だった。
1997年にはその後継、TJがデビュー。角型のヘッドライトは丸目に戻る。すなわち外観はウィリスMBに近くなったいっぽうで、リーフスプリングは4リンクのコイルサスペンションに。現代化したのであった。
YJ→TJと続いたラングラーは、JK型になる。2007〜2017年まで10年間続いた。TJ時代は単にロングホイールベースを意味した「アンリミテッド」は、この時代で4ドアとなる。
その後、2018年に日本国内で発表されたのが今回試乗するJLである。
JK型ラングラーとは?
写真で見る限り先代のJK型とあまり変わらないように見えるかも知れないが、JL型は、アンリミテッド(4ドア)比較で全長+165mm、全幅+15mm、ホイールベース+65mmと大幅な拡大を遂げた。
一方でドアパネルやフェンダーをアルミニウムに、骨格を一部マグネシウムに差し替える事で、先代−約100kgを実現した。
ジープといえば比較的大きい排気量のエンジンを連想しがちだが、この世代には2リッター直列4気筒ターボも加わった。(ちなみに2022年12月現在、3.6リッターV6は廃止され、2リッター直4に一本化されている)
内外装にグッとくるのは、どれもタフなオフロードユースを連想させ、かつてのジープに敬意を示すディテールが散りばめられているからだろう。ドアのヒンジは全て外にある。ルーフ全体は(その気になれば)外す事ができる(男性3名は必要)。フロントウインドウだって(その気になれば)倒すことができる。
これらの特徴はすべてオフロードの走破性を最優先した結果だ。ルーズなおかげで、ボコボコの岩場でもステアリングが急に反転することがないし、ボディオンフレーム構造だからこそ情報量も多く、タフな環境もどんと来いなのだ。
いずれも1世代前のモデルに比べると遥かに洗練された。内装は現代化されたし、今やアダプティブクルーズコントロールさえついている、という点は付け加えておこう。
「10mの高さから落としても壊れず、10気圧の防水性を持ち、10年寿命がある」。1981年に開発が始まったGショックの売り言葉だ。
たとえそんなことをせずとも、いざとなれば…。必要のないものにこそ、どうにも心を動かされ、自分を表現するツールになるのではあるまいか。
ジープは当初、必要に迫られてタフな軍用車を造り、曲げずに続けてきた。この「ジープらしさ」を一般道でも存分に味わえるのが良い。
エバーグリーン(Evergreen)=不朽。時代を超えたジープの信条を味わう。もしあなたに車好きの自覚があるならば一度は経験してもいいだろう。冒頭に述べたラングラー人気の裏で、ロマンと呼べる魅力が下支えしている。
SPEC
ジープ・ラングラー・アンリミテッド・サハラ3.6L
- 年式
- 2021年
- 全長
- 4870mm
- 全幅
- 1895mm
- 全高
- 1850mm
- ホイールベース
- 3010mm
- トレッド(前)
- 1600mm
- トレッド(後)
- 1600mm
- 車重
- 1960kg
- パワートレイン
- 3.6リッターV型6気筒
- トランスミッション
- 8速AT
- エンジン最高出力
- 284ps/6400rpm
- エンジン最大トルク
- 347Nm/4100rpm
- サスペンション(前)
- コイル・リジッド
- サスペンション(後)
- コイル・リジッド
- タイヤ(前)
- 255/75R17
- タイヤ(後)
- 255/75R17