RESENSE(レセンス)に関わるメンバーインタビューは山﨑健さん。県外納車も多く、直接お客様と顔を合わせる機会は少ない。"だからこそ"と「最後の砦」を守る男。
言葉よりも、背中で
「楽しい、って気持ちは、ほんの一瞬です。」
そう言いながら、手にしたクロスで納車直前のクルマを丁寧に拭き上げていく。
表情にはどこか無骨なまっすぐさがにじみ、仕事に向かうその手つきには、揺るぎない誠実さが宿っていた。
明け暮れたテニス
中学、高校、そして大学と、テニスに没頭した青春時代。大学は福岡、スポーツ推薦で進学し、競技一筋の毎日を送った。
ラケットを握る姿は、試合中よりも練習中の方がいつも真剣だったという。
ある日、怪我をした。致命的だった。
「辞めるか、手術かと言われたときは怖かった。でも、どこかで『なんとかなる』って思ってたんですよね」
決断ののち、卒業。地元・大分へ戻り、社会に出てからはいくつかの業界を経験。
そして、あるとき出会ったのが自動車業界だった。
これなら私も
「買取の募集があって、なんとなく面白そうだなと思って。セールスじゃないんだと。実際にやってみたら、もうドンピシャでしたね」
業者との交渉、瞬間的な判断、大量の車を扱うダイナミックさ。なによりも、その「テンポ感」がかつてのテニス試合の空気を思い出させた。
「うちに来ませんか?」
1本の電話がつないだ、RESENSEとの縁
そこで様々な経験を積むにつれ、視野は広がった。
退職を決めたその夜。これまでのお付き合いから報告をしようとかけた電話で、RESENSEの代表がたまたま応答した。
状況を話すと、返ってきたのは一言。
「うちに来ませんか?」
その声に迷いはなく、だから山﨑さんは静かに頷いたという。
当時のRESENSEはまだ創業間もない時期。広がる事務所。ギャラリー・スペースの半分を占めるカフェだって、施工中の段階だった。
「え、車屋さんのショールームにカフェ? って思いましたけど(笑)。でも、それも含めて面白かったんです。どこかふつうの車屋ではないなって。」
最後の工程に宿る“責任”
山﨑さんが任されているのは、納車前の整備手配、作業指示、磨き、コーティング、書類チェックなど——いわば「最後の砦」。
表情を少し引き締めながら、作業リストを指でなぞる。
「ひとつ間違えたら、お客様との信頼が一気に崩れてしまう。だからこそ、一切の妥協はできません。」
県外納車も多く、直接お客様と顔を合わせる機会は少ない。だからこそ、細部に神経を張り巡らせる。
フロアマットの位置、ワイパーの動き、ガソリンメーターの針——すべてを、あたかも自分の家族が乗るかのように整える。
チームの“静かな支柱”として
声に力を込めるわけではない。でも、言葉の端々ににじむ覚悟がある。
どんなに忙しくても、周りのメンバーを気にかける目線は忘れない。若い社員の相談に静かに耳を傾ける姿もよく見かける。
「誰かがやらなきゃいけないことなら、僕がやればいいと思ってるんです。」
仕上げのためのファクトリーに響く工具の音の中でも、その姿は静かに、けれど確実に周囲を支えている。
家族という、もう一つの“原動力”
週末は、完全に家族の時間。12歳と10歳、2人の娘の送り迎えに、全力を注ぐ。
「他の家の子も一緒に乗せて、にぎやかですよ。もう、めちゃくちゃかわいいんです。」
その話になると、表情がふっと柔らかくなる。厳しい日々の中で、たった数時間のその時間が、かけがえのない癒しになっている。
語らずとも、伝わるものがある
「心を開いて、まっすぐ向き合う。僕、言葉で伝えるのはあまり得意じゃないので。」
そう言って、小さく笑う山﨑さん。その背中が、毎日語っている。
「派手じゃなくていい。でも、絶対に裏切らない。」
その姿勢が、RESENSEというチームに静かに、でも確かな安心を届けている。