メルセデスAMG G65ロング(4WD/7AT)入らぬなら斜めにしようホトトギス

V12エンジンがGクラスのボンネット下に収まらなかったとき、メルセデスAMGはどうしたか?そのまま斜めに押し込んだのだ。もはや兵器の香りすら漂うではないか。

V12エンジンがGクラスのボンネット下に収まらなかったとき、メルセデスAMGはどうしたか?そのまま斜めに押し込んだのだ。もはや兵器の香りすら漂うではないか。

V12エンジンは必須アイテム

V12。エンジン好きにとっての“至高”であろう。

フェラーリやランボルギーニといったスーパーカーブランドの必需品として最も有名だが、ラグジュアリィ表現の一つとして高性能がもてはやされてきたクルマ界では昔からサルーンやビッグクーペの超高級車にも12気筒エンジンは好んで搭載されてきた。

要するにカテゴリー毎のヒエラルキーにおいて頂点を極めることの証として、V12エンジンは必須アイテムでもあったのだ(もちろんその上をいく16気筒も然り)。

メルセデスAMG G65ロング(4WD/7AT)入らぬなら斜めにしようホトトギス

SUV全盛時代の今、当然のことながら、そこでも最上の存在にはV12が積み込まれている。

ロールスロイスカリナンやフェラーリプロサングエ、今はもう生産されていないがベントレー・ベンテイガなどがその代表例である。

過去にはVWがトゥアレグW12で高級路線に挑戦したこともあったし、アウディはQ7にV12TDIを積んでディーゼル技術を訴求したこともあった。

絶版となったそんな12気筒モデルは今や、ネオクラシックとして密かに人気を集めている。

メルセデスAMG G65ロング(4WD/7AT)入らぬなら斜めにしようホトトギス

そして、ここにもう一台の、これぞ究極というべきV12+SUVが存在する。SUV界において最も人気のあるモデル、メルセデスベンツGクラスにV12エンジンを押し込んだG65 AMGがそれだ。

G63の上をいくモデルである。そのことは車名からもすでに明らかだ。

65と言えば12気筒エンジンを積んだ600グレードに対するAMGグレードというその昔は一般的だった認識が、同じ形をしていても一層凄まじいクルマであるという先入観を存分に植え付けたものだった。

メルセデスAMG G65ロング(4WD/7AT)入らぬなら斜めにしようホトトギス

G63のほぼ倍のプライスタグ

取材車両は2013年式である。当時、G65AMGはメルセデスラインナップのなかで、同じくV12を積んでいたS65やSL65よりも高価、それも見た目にほとんど変わらないG63のほぼ倍のプライスタグをつけていた。

まさに頂点を極めた一台だった。


新車当時、G63とG65を同時に借り受けるという贅沢なテストを何度が行なった記憶がある。今でも印象に強く残っているのは、見た目がさほど変わらないにも関わらず、G65 は走り出す前から異様なオーラを放っていたことだ。どこか重々しく、堂々としていて、剛毅であった。

メルセデスAMG G65ロング(4WD/7AT)入らぬなら斜めにしようホトトギス

もちろんG63もスタンダードモデルのG550などに比べるとずっと勇壮な佇まいだったが、G65は、何度も言うけれどほぼ同じ見た目であるにも関わらず、“強く”見えた。

65のエンブレムとは、かくも重々しいものだったのだ。

たった“2”の違い。実際に動かしてみれば2どころの違いじゃない。200くらい違うと思った。

メルセデスAMG G65ロング(4WD/7AT)入らぬなら斜めにしようホトトギス

ひとことで言えば、全てがV12エンジンを中心に作られていると感じる。どんな場面でもその存在を意識する。

フェラーリやランボルギーニのミドシップモデルならまだしも、これはゲレンデ、クロカン4WDなのだ。そんな感覚は、過去のV12+SUVのなかで、背が高いだけのスポーツカーでSUVとはもはや言いづらいプロサングエを除くと、他になかった。

裏を返せばそれだけ無理やりに、あの旧式の車体に大きなV12エンジンを押し込めたということかもしれない。それでも、そこはメルセデス、無理やりに押し込んでなお制御は行き届いていた。

メルセデスAMG G65ロング(4WD/7AT)入らぬなら斜めにしようホトトギス

ゲレンデがふわりと軽く、劇的に

エンジンを掛ける。雄叫びは猛々しいが短い。すぐに落ち着いてくれるあたりはさすがメルセデスだ。

ゆっくりと走り出す。アクセルペダルは重め。右足を軽くのせておく感じのまま放っておくと、二千回転以下でちゃっちゃとシフトアップしていく。

この時点ではまだ12気筒感はさほど強くなく、力強いエンジンが本気モードではなく適当に仕事をこなしているという感覚だ。それゆえ車体の重々しさを如実に感知した。

メルセデスAMG G65ロング(4WD/7AT)入らぬなら斜めにしようホトトギス

前が空いたあたりで右足に力をこめてみた。突然ムチを入れられた“牛のような馬”のような加速にシートベルトで括り付けられているはずの身体がのけぞったかと思った。

さっきまでの重々しさはまるで消え、ゲレンデがふわりと軽く、劇的に加速する。

フル加速はスリリングの一言だ。ドライバーの腰下で獰猛な爆音を響かせている。なんなら重厚な音の上に着座する感覚すらあった。エンジン周りだけにスタビリティが残り、強く守られている感覚があって、それゆえキャビンは相対的に軽やかで、だからスリル満点というわけだ。

メルセデスAMG G65ロング(4WD/7AT)入らぬなら斜めにしようホトトギス

もちろん、実際にそうなっているわけじゃない。それが証拠に意外と意のままに動かすことができた。乗り心地も悪くない。

エンジンが中心であるとは言ったものの、それはあくまでも相対的にそう思っただけで、全体も強いがエンジン周りはもっと強い、というわけだった。

至高のGクラス。G65は別物だ。今後、V12エンジンカーはコレクターズアイテムとなることは必至。この価格で買えたことを羨む時がきっとくる。

SPEC

メルセデスAMG G65ロング

年式
2013年式
全長
4575mm
全幅
1860mm
全高
1950mm
ホイールベース
2850mm
車重
2590kg
パワートレイン
6リッターV型12気筒ツインターボ
トランスミッション
7速AT
エンジン最高出力
612ps/5000~5300rpm
エンジン最大トルク
1000Nm/2300~4300rpm
タイヤ(前)
275/50R20
タイヤ(後)
275/50R20
  • 西川淳 Nishikawa Jun

    マッチボックスを握りしめた4歳の時にボクの人生は決まったようなものだ。以来、ミニカー、プラモ、ラジコン、スーパーカーブームを経て実車へと至った。とはいえ「車いのち」じゃない。車好きならボクより凄い人がいっぱいいらっしゃる。ボクはそんな車好きが好きなのだ。だから特定のモデルについて書くときには、新車だろうが中古車だろうが、車好きの目線をできるだけ大事にしたい。

    著者の記事一覧へ

メーカー
価格
店舗
並べ替え