ポルシェ718ケイマンGTS 4.0 PDK(MR/7AT)もうこいつ最高かよ

乗る前から分かっている。当たり前だ、これはいいに決まっている。一旦ターボに舵を切ったモデルを時代に抗い再び自然吸気に戻すということは誰しもができることではない。

乗る前から分かっている。当たり前だ、これはいいに決まっている。一旦ターボに舵を切ったモデルを時代に抗い再び自然吸気に戻すということは誰しもができることではない。

「ポルシェの本気」が詰まった

ポルシェ718ケイマンGTS 4.0(2023年モデル)のボディが輝いている。カラーはレーシングイエロー。立体駐車場に佇む姿は、まるで猛禽類が獲物を狙っているかのような緊張感に満ちている。

718ケイマンは、ポルシェが誇る「ミッドシップ・スポーツカー」の最高峰モデルだ。

その中でもGTS 4.0は、自然吸気4.0リッターの水平対向6気筒エンジンを搭載した、走りに特化したモデルである。

ポルシェ718ケイマンGTS 4.0 PDK(MR/7AT)もうこいつ最高かよ

フロントからリアに流れるようなシルエット。ボンネットは低く、フェンダーが力強く張り出している。そのフロントバンパーには大きなエアインテークが備わり、ダークなアクセントがレーシングイエローのボディに鋭いコントラストを生み出している。

ブラック仕上げの純正ホイールが足元を引き締め、ブレーキキャリパーはポルシェらしいレッドで塗装されている。

サイドに目を移すと、フロントフェンダー後方に設けられたエアインテークが目を引く。これはGTS専用のデザインで、ミッドシップに収まるエンジンに効率よくフレッシュエアを供給している。

リアエンドは718ケイマンのアイデンティティそのもの。ブラックアウトされたテールランプ、センターに配されたスポーツエグゾーストシステム、そして「P O R S C H E」ロゴが誇らしげに輝いている。

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ドアを開けて乗り込むと、そこには「ポルシェの本気」が詰まった空間が広がっている。

シートにはアルカンターラとレザーが組み合わされ、ヘッドレストには「GTS」のロゴが刺繍されている。ステアリングホイールはスエード仕上げで、グリップ感が指先にダイレクトに伝わってくる。

ダッシュボードには「GTS 4.0」のプレートが刻まれており、ポルシェの誇りと哲学が詰まった「特別な一台」であることを感じさせる。 いたるところに配される黄色の差し色もよい。

エンジンをスタートさせると、リアに収まる4.0リッター水平対向6気筒が目を覚ます。

背後から「ズドドッ」という重厚な振動が伝わり、同時にフラットシックス独特の乾いた排気音が響き渡る。

静かに鼓動しながら、まるで「行くぞ」と言わんばかりのプレッシャーを発している。

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「意のままに操る感覚」

Dレンジにカチリと入れて、レーシングイエローのボディが滑るように走り出す。

GTS 4.0に搭載されるエンジンは、4.0リッターの水平対向6気筒。自然吸気ならではの鋭いレスポンスが、アクセルを軽く踏んだ瞬間から伝わってくる。

最高出力は400ps、最大トルクは420Nmを5500rpmで発生。ターボエンジンとはまったく異なる「自然な伸び」が、このエンジンの最大の魅力だ。

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アクセルを踏み込むと、2000rpmからすでにトルクが湧き上がり、4000rpmを超えると怒涛の加速が始まる。

そして7800rpmまで一気に吹け上がるその感覚は、まさに「機械と人間がシンクロする瞬間」だ。

PDK(デュアルクラッチ)トランスミッションのシフトチェンジはまさに電光石火。パドルシフトを操作すれば、わずか0.1秒で次のギアがつながる。

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ワインディングロードに入ると、GTS 4.0の本領が明らかになる。

フロントにはストラット式、リアにはマルチリンク式サスペンションが採用され、PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント)が瞬時にダンパーを調整。結果として、コーナリング時のロールがほぼ皆無になる。

フロントからリアへの重量バランスは44:56。まさに理想的なミッドシップレイアウトだ。ステアリングに伝わるインフォメーションは「濃密」そのもの。路面の細かい凹凸やタイヤのグリップ感までが、指先に正確に伝わってくる。

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アクセルを踏み込めばリアタイヤがしっかりと路面を掴み、スロットルコントロール一つで車体の向きが自在に変わる。

この「意のままに操る感覚」が、GTS 4.0の真骨頂だ。

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「走る歓び」を完璧に体現した

さらに速度が高まるとと、GTS 4.0はまた別の顔を見せる。

120km/hでクルージングしていても、エンジン回転数はわずか2500rpm。室内は静寂に包まれており、乗り心地も意外なほどにしなやかだ。

スポーツモードに切り替えると、排気バルブが開き、エグゾーストノートが一気に荒々しさを増す。アクセルを踏み込めば、タコメーターが7800rpmまで一気に跳ね上がり、背中を押し付けられるような加速Gが全身に伝わる。

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その一方で、GTS 4.0は街中でもストレスを感じさせない。低速域でもトルクが厚く、ステアリングフィールも軽く、取り回しはスムーズだ。

「スポーツカー」としての圧倒的なパフォーマンスと、「GTカー」としての快適性。その相反する要素をここまで高い次元で融合させているのは、さすがポルシェとしか言いようがない。

エンジンを止め、キーを抜く。

ポルシェ718ケイマンGTS 4.0 PDK(MR/7AT)もうこいつ最高かよ

ポルシェ718ケイマンGTS 4.0は、「走る歓び」を完璧に体現した一台だ。

すべてが意のまま。
すべてが完璧。

これが、ポルシェが作り出した「究極のミッドシップスポーツカー」である。

ポルシェ718ケイマンGTS 4.0 PDK(MR/7AT)もうこいつ最高かよ

SPEC

ポルシェ718ケイマンGTS 4.0 PDK

年式
2023年式
全長
4405mm
全幅
1800mm
全高
1285mm
ホイールベース
2475mm
車重
1470kg
パワートレイン
4リッター水平対向6気筒
トランスミッション
7速AT
エンジン最高出力
400ps/7000rpm
エンジン最大トルク
420Nm/5000~6500rpm
タイヤ(前)
235/35ZR20
タイヤ(後)
265/35ZR20
  • 上野太朗 Taro Ueno

    幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。

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