ルノー・トゥインゴ・キャンバストップ(RR/6AT)愛らしさをひたすら全開にする

6速のRRに乗っているんだ。屋根は開いてライトウェイトでコンパクト。鼻息の荒いレセンス読者なら一瞬であらゆる時代の「911」を連想するだろう。あの、違いますよ!

6速のRRに乗っているんだ。屋根は開いてライトウェイトでコンパクト。鼻息の荒いレセンス読者なら一瞬であらゆる時代の「911」を連想するだろう。あの、違いますよ!

パリの街角からそのまま

ルノー・トゥインゴ。2017年式のトゥインゴが、パリの街角からそのまま抜け出してきたような愛らしさで目の前に佇んでいる。

ボディカラーは鮮やかなブルードラジェ。スモールハッチバックでありながら、見る者の目を引きつけるフレンチデザインの粋が詰まっている。

全長3620mm、全幅1650mm、全高1545mmというコンパクトなサイズ感。しかし、ホイールベースは2490mmと長く取られており、全体のシルエットにどこか「余裕」を感じるのが不思議だ。

ルノー・トゥインゴ・キャンバストップ(RR/6AT)愛らしさをひたすら全開にする

トゥインゴ最大の特徴は「RRレイアウト(リアエンジン・リアドライブ)」であること。今やリアエンジンレイアウトを採用している市販車は極めて稀だが、ルノーはあえてこの構成を選んだ。

フロントには大きな「ルノーロゴ」が鎮座し、ヘッドライトにはルノーらしい「Cシェイプ」のLEDが組み込まれている。バンパーには丸みを帯びたラインが施され、フロントフェイス全体が「愛嬌」と「精悍さ」を同時に表現している。

サイドビューに目を移すと、ショートオーバーハングが強調され、タイヤはボディ四隅に配置されている。これはRRレイアウトならではの恩恵だ。

リアエンドには、小ぶりなハッチゲートと特徴的なリアランプが組み込まれており、「ルノー5」を彷彿とさせるクラシカルな雰囲気も感じる。

ルノー・トゥインゴ・キャンバストップ(RR/6AT)愛らしさをひたすら全開にする

ドアを開けてコクピットに乗り込むと、そこには「フレンチポップ」の世界が広がっている。

シートはカジュアルなファブリック素材だが、ホールド感は意外なほどしっかりしている。ダッシュボードにはカラーパネルがあしらわれる。

シンプルなインテリアだが、スイッチやレバーの操作感にはしっかりと「質感」がある。そして何より、コクピット全体から「クルマを楽しむ」というフレンチスピリットが滲み出ている。

イグニッションボタンを押すと、リアに搭載された直列3気筒ターボエンジンが静かに目を覚ます。RRレイアウトならではのわずかな振動が、背中越しに心地よく伝わってくる。

ルノー・トゥインゴ・キャンバストップ(RR/6AT)愛らしさをひたすら全開にする

リアエンジンならでは

Dレンジに入れてアクセルを踏み込むと、トゥインゴは驚くほどスムーズに滑り出す。

搭載されているのは0.9リッター直列3気筒ターボエンジン。最高出力90ps、最大トルク135Nmを2500rpmで発生する。数字だけ見ると「平凡」に思えるが、実際に走り出すとそのフィーリングはまったく異なる。

まず驚かされるのは、低速からのトルク感。リアエンジンならではのリア駆動がもたらすトラクションの良さが、発進時の「もたつき」をまったく感じさせない。

そして、ハンドリングが秀逸だ。フロントエンジンのクルマと違い、トゥインゴのフロントにはエンジンが搭載されていないため、フロント荷重が非常に軽い。

結果として、ステアリングフィールが驚くほど軽快でダイレクトになる。

最小回転半径はわずか4.3m。街中のUターンや狭い駐車スペースでも、軽くステアリングを回すだけでクルッと回り込む。この感覚は、まるで「FF(フロントエンジン・フロントドライブ)」車とは別次元のものだ。

ルノー・トゥインゴ・キャンバストップ(RR/6AT)愛らしさをひたすら全開にする

ワインディングロードに入ると、トゥインゴの本領がさらに明らかになる。RRレイアウトならではのトラクションの良さが、コーナリング時に圧倒的な安定感をもたらす。

リアタイヤが地面をしっかりと捉え、フロントが正確にインに切れ込む。ボディの軽さも相まって、スロットルをわずかに開けるだけでリズムよくコーナーを駆け抜けていく。

ルノー・トゥインゴ・キャンバストップ(RR/6AT)愛らしさをひたすら全開にする

エンジンは4000rpmを超えると「ヒュンッ」と軽快なサウンドを奏で、3気筒ターボならではのラフな音色が鼓動を刺激する。

そしてブレーキング性能も申し分ない。ディスクブレーキは初期制動がリニアで、ペダルを踏み込むほどに制動力が増していく。

ルノー・トゥインゴ・キャンバストップ(RR/6AT)愛らしさをひたすら全開にする

クルマを走らせる楽しさ

インテリアの居住性も優秀だ。フロントシートのホールド感は十分で、後部座席も頭上と膝周りに余裕がある。

キャンバストップをあければ、一気に開放感が増し、日常のあれこれを忘れられる。

リアにエンジンを搭載しているため、荷室容量は大きくない。しかしリアシートを倒せばフラットな荷室が広がり、日常の買い物や旅行にも十分に対応可能だ。

ルノー・トゥインゴ・キャンバストップ(RR/6AT)愛らしさをひたすら全開にする

トゥインゴは「単なるコンパクトカー」ではない。

フレンチデザインの遊び心、RRレイアウトの本格的な走り、そして使い勝手の良さ。

ルノー・トゥインゴは、「クルマを走らせる楽しさ」を日常に溶け込ませる稀有な存在だ。

ルノー・トゥインゴ・キャンバストップ(RR/6AT)愛らしさをひたすら全開にする

走り終えた後も、フロントに輝く「ダイヤモンドエンブレム」が心に焼き付いている。

ルノー・トゥインゴは「日常に舞い降りたフレンチ・スポーツカー」だ。

SPEC

ルノー・トゥインゴ・インテンス・キャンバストップ

年式
2017年式
全長
3620mm
全幅
1650mm
全高
1545mm
ホイールベース
2490mm
車重
1030kg
パワートレイン
0.9リッター直列3気筒ターボ
トランスミッション
6速AT
エンジン最高出力
90ps/5500rpm
エンジン最大トルク
135Nm/2500rpm
タイヤ(前)
165/65R15
タイヤ(後)
185/60R15
  • 上野太朗 Taro Ueno

    幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。

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