ボルボV40 T4(FF/6AT)コンパクトに品よく、クールと冷静のあいだで

あたり一面の空気を、そのままスカンジナビアから運んできたかのような雰囲気へと変えてしまうシルバーのボルボV40。控えめでありながら、確かな存在感の一台を味わう。

あたり一面の空気を、そのままスカンジナビアから運んできたかのような雰囲気へと変えてしまうシルバーのボルボV40。控えめでありながら、確かな存在感の一台を味わう。

空気をそのまま映し出した

試乗車のボルボV40 T4(2014年式)が静かに佇む。ボディカラーはシルバー。その淡く冷たい輝きが、スカンジナビアの空気をそのまま映し出したかのようだ。

ボルボのデザインは「控えめ」でありながら、「確固たる主張」がある。

まず目を引くのは、そのプロポーションだ。全長4370mm、全幅1800mm、そして全高1440mmというサイズは、Cセグメントハッチバックとしては標準的ながら、V40はドイツ車に見られない輝きを放っている。

ボルボV40 T4(FF/6AT)コンパクトに品よく、クールと冷静のあいだで

フロントグリルに鎮座するアイアンマーク、左右に広がる「トールハンマー」を思わせるLEDヘッドライトが、ボルボであることを静かに、しかし力強く主張する。

サイドから見れば、その美しいルーフラインが印象的だ。リアに向かってなだらかに下降するフォルムは、スポーティさとエレガンスを両立しているとおもう。

16インチのアルミホイールが程よいボリューム感を与え、リアに回り込むと、縦に長く配置されたLEDテールランプがまた精悍な印象を与えてくれる。

ボルボV40 T4(FF/6AT)コンパクトに品よく、クールと冷静のあいだで

シルバーカラーは、ボルボV40の持つ「北欧の美学」をより際立たせている。ブラックのトリムやクロームのアクセントがボディラインを引き締め、全体に洗練された印象を与える。奇抜さや過剰な装飾は一切ない。ボルボのデザインは「本質的な美しさ」に根ざしているのだ。

コクピットに足を踏み入れると、そこには「ボルボの世界」が広がっている。ダッシュボードからセンターコンソールにかけて流れる一体感のあるデザイン、そしてスカンジナビア家具を思わせるミニマルなインテリア。

レザーとアルミが織りなす質感は、ドイツ車のような重厚さとは異なる「温もり」がある。

ボルボV40 T4(FF/6AT)コンパクトに品よく、クールと冷静のあいだで

センターコンソールはボタンの配置が整理され、ボルボ独自の「フローティングデザイン」は相変わらず美しい。

シートに腰を下ろすと、そのホールド感に驚く。人体工学に基づいた設計が、まさに「北欧家具」のような感触を与えてくれる。

エンジンスタートボタンを押すと、T4に搭載される1.6リッター直列4気筒ターボエンジンが目を覚ます。アイドリング時の静けさに、すでにボルボらしい「洗練」を感じ取る。

ボルボV40 T4(FF/6AT)コンパクトに品よく、クールと冷静のあいだで

常に「冷静」である

Dレンジに入れてアクセルを踏み込むと、V40 T4はシルバーボディをしなやかに輝かせながらスムーズに滑り出す。

1.6リッターターボエンジンは180psを生み、最大トルク240Nmを1600rpmという低回転から引き出す。このトルクの出方が素晴らしい。

スタートダッシュはなめらかで、まるで電動車のようにリニアだ。6速デュアルクラッチトランスミッションが瞬時にギアをつなぎ、アクセルを踏み込むとエンジンがターボラグを感じさせることなくトルクを絞り出す。

ボルボV40 T4(FF/6AT)コンパクトに品よく、クールと冷静のあいだで

ワインディングロードに差し掛かると、V40 T4の本領が明らかになる。電動パワーステアリングは軽めのタッチながら、舵角に対する反応が驚くほど正確だ。

フロントにはマクファーソンストラット、リアにはマルチリンク式サスペンションが備わっており、コーナリング時には車体のロールを最小限に抑えつつ、タイヤがしっかりと路面を捉える感覚が伝わってくる。

コーナーの立ち上がりでは、ターボエンジンが頼もしい。2000rpmを超えると一気にパワーが湧き上がり、グイグイと車体を押し出していく。

ボルボV40 T4(FF/6AT)コンパクトに品よく、クールと冷静のあいだで

その一方で、アクセルオフ時には静かに減速し、エンジンブレーキのかかり方が自然だ。

ブレーキのフィーリングも絶妙だとおもう。初期制動はソフトだが、ペダルを踏み込むほどに剛性感が増し、リニアな減速Gが感じられる。安心感が抜群に高い。

ボルボ独自の安全システム「シティセーフティ」も装備されており、低速域では衝突回避支援機能が働く。ヒヤリとする場面でも、V40は常に「冷静」である。

ボルボV40 T4(FF/6AT)コンパクトに品よく、クールと冷静のあいだで

ストレスフリーな移動を実現

V40 T4が真価を発揮するのは、都市部でのクルージング時だ。エンジンの静粛性とサスペンションの快適さが、ストレスフリーな移動を実現してくれる。

アイドリングストップ機能は素早く作動し、信号待ちでエンジン音は完全に消える。再始動もスムーズで、振動はまったく感じない。

市街地での乗り心地は柔らかく、それでいてボディ剛性がしっかりしているため、段差を超える際の「揺れ戻し」が少ない。

ボルボV40 T4(FF/6AT)コンパクトに品よく、クールと冷静のあいだで

長距離移動では、ボルボ独自の「シートの魔法」が効いてくる。フロントシートは長時間座っていても腰への負担が少なく、後部座席も大人が十分なスペースを確保できる。

燃費も優秀だ。1.6リッターターボエンジンは、高速道路でリッター16km近くを記録するという。

スポーツとエコノミーのバランスが見事に取れている。

ボルボV40 T4(FF/6AT)コンパクトに品よく、クールと冷静のあいだで

ボルボV40 T4──それは「静かな力強さ」と「確かな安全」が共存する一台だ。

北欧の風を感じながら、シルバーのボディが光を受けて輝く。控えめでありながら、確かな存在感。これこそが、ボルボV40 T4の本質である。

SPEC

ボルボV40 T4 SE

年式
2014年式
全長
4370mm
全幅
1800mm
全高
1440mm
ホイールベース
2645mm
車重
1440kg
パワートレイン
1.6リッター直列4気筒ターボ
トランスミッション
6速AT
エンジン最高出力
180ps/5700rpm
エンジン最大トルク
240Nm/1600~5000rpm
タイヤ(前)
205/50R17
タイヤ(後)
205/50R17
  • 上野太朗 Taro Ueno

    幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。

    著者の記事一覧へ

メーカー
価格
店舗
並べ替え