フェラーリGTC4ルッソ(4WD/7AT)だんだん好きになり、やがて必要不可欠に

V8スポーツモデル(今はV6も忘れてはならない)とは異なり、一見さんお断り。の雰囲気が漂う4シーターV12の跳ね馬。ルッソ(贅沢)な人々は密かに楽しんでいる。

V8スポーツモデル(今はV6も忘れてはならない)とは異なり、一見さんお断り。の雰囲気が漂う4シーターV12の跳ね馬。ルッソ(贅沢)な人々は密かに楽しんでいる。

クライアント専用駐車場

フェラーリ乗りなら誰もが憧れるイベントがある。年に一度のサーキット祭「フィナーリ・モンディアーリ」だ。

F1ドライバーやワークスドライバーが勢揃いし、F1クリエンティやXXプログラム、各国チャレンジ参加者などが招待されるという世界で最も“赤々しい”サーキットイベントで、言わばスクーデリア・フェラーリによるVIP専用ファン感謝デーだ。

当然ながら最新レーシングマシーンや新型モデル、歴代の跳ね馬が一堂に介するが、私はある時、会場のクライアント専用駐車場に注目してみた。

フェラーリGTC4ルッソ(4WD/7AT)だんだん好きになり、やがて必要不可欠に

いったいどんな跳ね馬でVIPたちはムジェロやイモラなどイタリアのサーキットへやってくるのだろう?きっと最新モデルやスペチアーレ(限定車)、歴史的名車のオンパレードに違いない、と期待して覗いてみたら、いい意味で拍子抜けした。

FFとGTC4ルッソだらけ、だったのだ。

もちろん限定車やクラシックもちらほら見かける。フツーのフェラーリイベントよりも確かに珍しい跳ね馬は多い。けれどもかの4シーターフェラーリの数もまた尋常ではない(日本のイベントでは逆にほとんど見かけない)。

フェラーリGTC4ルッソ(4WD/7AT)だんだん好きになり、やがて必要不可欠に

よくよく見れば、フツーのFF・ルッソではなく、ほとんどがテーラーメード(特注)で、変わった色の個体ばかり。

ナンバーを見ればスイスやフランス、スペイン、ベルギー、英国と“近隣”ヨーロッパ登録が多い。レーシングカーやクラシックカーをトランポで運び、自らはラクなGT(かへり)で。

なるほどこれが頂点フェラリスティたちの愛馬か、と妙に納得したものだ。

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改めて“良い”と思う

というわけで前置きが長くなったけれど、伝統的な4シーターの跳ね馬の代わりに4ドアのプロサングエが登場した今となっては、FFやルッソを改めて“良い”と思うようになった、という話をしたい。

相方はもちろんGTC4ルッソ。もちろんV12を積んでいる方だ。

人気の定番カラー、ビアンコアブス。カッパーゴールドのキャリパーカラーが洒落ている。インテリアは黒に赤のサシ、イエローステッチ。定番の仕立て、外しのないぶん、万人にウケそう(万人ウケする跳ね馬ではないけれど)。オプションの大サンルーフがはまっていた。

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白いフェラーリは、特にここ日本においては絶大なる人気を誇っている。というかそもそも白の似合わないクルマなど存在しないから、どの跳ね馬だってキレイに収めてしまう。

ルッソの場合、実際のボディサイズより大きく見える(=膨張色)きらいもあるけれど、それがかえってシューティングブレークスタイルを際立たせ、ルッソの特徴的なサイドウィンドウグラフィックを際立たせていた。

フェラーリGTC4ルッソ(4WD/7AT)だんだん好きになり、やがて必要不可欠に

エンジンスタートボタンをプッシュ。V12がかなりの爆音とともに目覚めた。

最新のプロサングエやドーディチチリンドリと比べて、圧倒的に元気がいい。最新モデルのエンジンスタート音に慣れた身としては、ちょっと身構えてしまうほどの爆音だった。

元気の良さにつられて軽くアクセルを煽ってみる。軽やかかつ弾けるように反応する12気筒エンジンが、今となってはすこぶる愛おしい。ヴォオウォオーン!

フェラーリGTC4ルッソ(4WD/7AT)だんだん好きになり、やがて必要不可欠に

エンジンの勇ましいサウンド

街中を走り出しても、V12の存在感が際立っている。

新車当時、2シーターモデルのF12と比べて確実におとなしい印象のあったルッソなのに、デビューからおよそ10年が経った今ではそれすら勇ましく耳に届く。

エンジンは日増しに効率を上げ、音や振動といった個性を失いつつあるというわけだ。

フェラーリGTC4ルッソ(4WD/7AT)だんだん好きになり、やがて必要不可欠に

12気筒エンジンの勇ましいサウンドを鳴り響かせて街中を走った。

交差点を曲がった瞬間、その思いがけず俊敏なノーズの動きに思わず唸ってしまう。記憶にあるよりずっとハンドリングが機敏だったからだ。ニンブル、アジャイルであると表現しても決して大袈裟じゃない。

さらにいうと乗り心地もけっこうハード。立派にスポーツカーしている。それでいて直進安定性は昔の跳ね馬に比べて格段に良いのだから、FF以来のユニークな4WDシステムのそれは恩恵であろう。

フェラーリGTC4ルッソ(4WD/7AT)だんだん好きになり、やがて必要不可欠に

最新の4シーター、4ドアのプロサングエは確かにとても完成度の高いモデルだ。SUVのような視線の高さもまた魅力的ではある。

けれども同じホイールベースを持つルッソには、最新モデルが洗練と引き換えに失ったわかりやすい官能性、昔ながらのサウンドやライドフィールが残っている。

おそらく今のフィナーリ・モンディアーリのVIPパーキングにはプロサングエが群れていることだろう。けれども背の高いモデルは苦手というフェラリスティも少なくない。

FFやルッソの12気筒を大事に乗り続けるというオーナーも多いはずだ。実際、スペチアーレやクラシックな跳ね馬を収めるガレーヂでは、プロサングエよりもルッソの方が並びが良いと思う。

SPEC

フェラーリGTC4ルッソ

年式
2017年式
全長
4922mm
全幅
1980mm
全高
1383mm
ホイールベース
2990mm
車重
1790kg
パワートレイン
6.3リッターV型12気筒
トランスミッション
7速AT
エンジン最高出力
690ps/8000rpm
エンジン最大トルク
697Nm/5750rpm
タイヤ(前)
245/35ZR20
タイヤ(後)
295/35ZR20
  • 西川淳 Nishikawa Jun

    マッチボックスを握りしめた4歳の時にボクの人生は決まったようなものだ。以来、ミニカー、プラモ、ラジコン、スーパーカーブームを経て実車へと至った。とはいえ「車いのち」じゃない。車好きならボクより凄い人がいっぱいいらっしゃる。ボクはそんな車好きが好きなのだ。だから特定のモデルについて書くときには、新車だろうが中古車だろうが、車好きの目線をできるだけ大事にしたい。

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