フォルクスワーゲン・ゴルフ・カブリオレ(FF/7AT)ソフトトップという意外性

なぜこのクルマはソフトトップを採用したのだろうか、キャラクターを的にはハードトップの方が適しているのではないか?そんな考えは静粛性と荷室容量によって杞憂となる。

なぜこのクルマはソフトトップを採用したのだろうか、キャラクターを的にはハードトップの方が適しているのではないか?そんな考えは静粛性と荷室容量によって杞憂となる。

風になりたい

冬の終わりを感じさせる三月の陽光が、街をやさしく包み込んでいた。こんな日に乗るなら、やはりオープンカーしかない。

VWゴルフ・カブリオレ2012年式のキーを手に、僕はさっそく幌を開ける。

スイッチを押せば、電動ソフトトップが静かに格納され、頭上には青く澄み渡った空が広がる。この瞬間、クルマとの距離が一気に縮まる気がする。

フォルクスワーゲン・ゴルフ・カブリオレ(FF/7AT)ソフトトップという意外性

1.4リッターTSIエンジンに火を入れる。セルモーターの音が一瞬響いたのち、スムーズにアイドリングを始めた。足元のアクセルペダルを軽く踏み込めば、ターボのブーストが穏やかにかかり、低回転域からしっかりとしたトルクが感じられる。

一般道の流れに乗るのは容易く、ストレスを感じることはない。

信号待ちのたびにふと見上げる空が、普段よりも広く感じられるのは、オープンカーならではの特権だ。

フォルクスワーゲン・ゴルフ・カブリオレ(FF/7AT)ソフトトップという意外性

VWゴルフといえば、端正なルックスと実用性を兼ね備えたハッチバックの名車だ。しかし、カブリオレはまた違った表情を見せる。

フレームレスのドアを閉じた瞬間に感じる剛性感、屋根を開けたときの開放感、そして風の流れが心地よい。

特に街中を流していると、そのしなやかさが光る。段差を乗り越える際のショックも穏やかで、ボディのねじれをほとんど感じさせないのは、VWの作り込みの妙だろう。開けた視界と相まって、都会の風景がいつもより鮮やかに映る。

フォルクスワーゲン・ゴルフ・カブリオレ(FF/7AT)ソフトトップという意外性

屋根を開けて走ることで感じる風の質感は、このクルマの完成度をより際立たせる。

オープンカーといえば、風の巻き込みが気になることもあるが、ゴルフ・カブリオレはその点が非常によく抑えられている。

80km/h程度までなら、室内の空気は穏やかで、会話も普通にできるレベルだ。ウインドディフレクターを使えばさらに快適さは増し、これなら長距離ドライブも苦にならないだろう。

フォルクスワーゲン・ゴルフ・カブリオレ(FF/7AT)ソフトトップという意外性

それぞれのシチュエーション

このゴルフ・カブリオレを一般道のみでじっくりと試す。都心の渋滞、郊外の広い幹線道路、そして住宅街の細い路地。

それぞれのシチュエーションで、このクルマがどのように振る舞うのかを確かめてみた。

フォルクスワーゲン・ゴルフ・カブリオレ(FF/7AT)ソフトトップという意外性

まず都心の渋滞では、アイドリングストップ機能が静かに作動し、エンジン音が消える。再始動もスムーズで、違和感はほとんどない。

DSG(デュアルクラッチトランスミッション)は低速域でもギクシャク感が少なく、スムーズな発進が可能だ。ハンドルは軽めで取り回しやすく、視界も広いため、車線変更や交差点での右左折もストレスなくこなせる。

幹線道路では、TSIエンジンの余裕を感じる。流れに乗るのは容易く、80km/h付近での巡航も安定している。

アクセルを少し踏み増せば、ターボの恩恵を感じながらスムーズに加速できる。またエンジンそのものも元気だ。淀みなく回り、サウンドも気持ちを盛り上げてくれる。またその音を開け放った窓から聴けるのもよい。

フォルクスワーゲン・ゴルフ・カブリオレ(FF/7AT)ソフトトップという意外性

オープンにしていても風の巻き込みが少ないのも特徴だ。快適なドライブが続く。

住宅街の細い路地では、ゴルフのコンパクトなボディサイズが活きる。小回りが利くので、狭い道でも扱いやすい。

ソフトトップを閉じれば、周囲の音がしっかり遮断され、静粛性はクラスを超えたレベルにある。一般道における日常使いの快適さは、まさにVWの真骨頂だ。

フォルクスワーゲン・ゴルフ・カブリオレ(FF/7AT)ソフトトップという意外性

パッケージングの妙

カフェのテラス席に座り、コーヒーをひと口。試乗の余韻に浸りながら、ふと考える。

このゴルフ・カブリオレ、日常の相棒としてどうだろうか?

フォルクスワーゲン・ゴルフ・カブリオレ(FF/7AT)ソフトトップという意外性

まず実用性の面では、トランクの容量が十分に確保されており、後席も大人がしっかり座れるスペースがある。

ゴルフのパッケージングの妙は、カブリオレになっても健在だ。幌を閉めた際の静粛性も驚くほど高く、布製ルーフとは思えないほどの遮音性を誇る。

これなら、オープンカーとしてだけでなく、普段の足としても十分に使える。

フォルクスワーゲン・ゴルフ・カブリオレ(FF/7AT)ソフトトップという意外性

燃費性能も優秀だった。市街地ではリッター12km前後、高速巡航ではリッター15km以上を記録することも珍しくない。

燃費を気にせず、気軽にドライブを楽しめるのも、このクルマの魅力のひとつだろう。

そして何より、このクルマには「余裕」がある。無理に飛ばさなくても、気持ちのいいペースで流すだけで満足できる。それはゴルフの本質そのものだ。

フォルクスワーゲン・ゴルフ・カブリオレ(FF/7AT)ソフトトップという意外性

実用性と楽しさ、その絶妙なバランスを持ったカブリオレ。こんな一台が、人生を少しだけ豊かにしてくれる気がする。

春風が、そっと幌を開けたゴルフ・カブリオレを撫でていった。

SPEC

フォルクスワーゲン・ゴルフ・カブリオレ

年式
2012年式
全長
4260mm
全幅
1780mm
全高
1430mm
ホイールベース
2575mm
車重
1470kg
パワートレイン
1.4リッター直列4気筒ターボ+スーパーチャージャー
トランスミッション
7速AT
エンジン最高出力
160ps/5800rpm
エンジン最大トルク
240Nm/1500-4500rpm
タイヤ(前)
225/45R17
タイヤ(後)
225/45R17
  • 上野太朗 Taro Ueno

    幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。

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