フォルクスワーゲン・クロスポロ(FF/7AT)オンオフ、常に気軽さを伴いながら

街中での移動、山道への移動。その逆も然り。2025年の今、国産コンパクトでも苦も無くこなせるかもしれない、しかし、そこにオシャレさを少しプラスしてみませんか?

街中での移動、山道への移動。その逆も然り。2025年の今、国産コンパクトでも苦も無くこなせるかもしれない、しかし、そこにオシャレさを少しプラスしてみませんか?

都会の森を駆ける野生児

朝の光が、VWクロスポロのオレンジのボディに跳ね返る。久しぶりに心躍るクルマに出会った気がした。

コンパクトなボディに無骨なクロスオーバーのデザインをまとったその姿は、都会のジャングルを軽快に走る野生児のようだ。

VWのしっかりとした作りの上に、専用の足回りが組み合わさり、ただの「SUV風デザイン」では終わらない走りを予感させる。

フォルクスワーゲン・クロスポロ(FF/7AT)オンオフ、常に気軽さを伴いながら

エンジンを始動すると、1.2リッターTSIが静かに目覚める。ちいさな排気量ながら、ターボの力で低回転からしっかりとトルクが出るので、ストップ&ゴーの多い街中でもスムーズに走ることができる。

7速DSG(デュアルクラッチAT)の素早い変速が心地よい。特に低速域では、エンジンの回転を抑えつつも力強く前に出る感覚があり、一般的なコンパクトカーとはひと味違う。

信号待ちの間に車内を見回すと、VWらしいシンプルで質の高いインテリアが広がる。メーターパネルは視認性が良く、操作系のスイッチ類も直感的に使える配置になっている。

フォルクスワーゲン・クロスポロ(FF/7AT)オンオフ、常に気軽さを伴いながら

シートはしっかりした作りで、長時間座っても疲れにくそうだ。ドイツ車らしい実用性が感じられ、派手さはないが安心感がある。

街を流しながら改めて感じるのは、乗り心地のバランスの良さ。クロスポロは、普通のポロよりも車高が少し高くなっているが、その分サスペンションの設定がしっかりしており、フワフワした感じはない。

段差を越えても不快な突き上げが少なく、舗装の荒れた道でも安定感がある。街乗りでは、この「ちょうどいい乗り味」がとても快適に感じる。

フォルクスワーゲン・クロスポロ(FF/7AT)オンオフ、常に気軽さを伴いながら

ワインディングで見せる意外性

市街地から少し離れたカーブの多い道を走る。ここでクロスポロの真価が試される。

一般的なコンパクトSUVでは、コーナーでの安定感が今ひとつな場合が多いが、クロスポロはその点が違う。

足回りは標準のポロよりも15mm高められているが、サスペンションは引き締まっており、しっかりとした走りだといえる。

フォルクスワーゲン・クロスポロ(FF/7AT)オンオフ、常に気軽さを伴いながら

ハンドルを切ると、思いのほかスムーズにクルマが反応する。ステアリングは軽すぎず、操作に対して正確に反応するVWらしい味付け。

コーナーに向かってブレーキを踏むと、これまたしっかりとした制動力があり、前輪に荷重を残したままスムーズにターンインできる。

サスペンションがよく動き、ロールは抑えられつつもしなやかさがあるため、安心感を持ってコーナーを抜けられる。

フォルクスワーゲン・クロスポロ(FF/7AT)オンオフ、常に気軽さを伴いながら

ターボエンジンの力を活かしながら、登り坂でもストレスなく加速できる。

1.2リッターとは思えないほど力強く、必要なときにしっかりとトルクが出るので、ワインディングでも余裕をもって走れる。

スムーズな7速DSGはまた、賢い。エンジンの美味しい回転域をしっかりキープしてくれる。スポーツカーのような刺激はないが、コンパクトSUVとしては異例の安定感と扱いやすさを備えている。

フォルクスワーゲン・クロスポロ(FF/7AT)オンオフ、常に気軽さを伴いながら

また、クロスポロの車高の高さは、ワインディングロードの荒れた路面でも威力を発揮する。

普通のポロでは気になるような段差やわずかな凹凸も、クロスポロなら難なくクリアできる。

スポーツモデルのような鋭さはないが、しっかりとした走りと適度な快適性を兼ね備えている点が、このクルマの魅力だ。

フォルクスワーゲン・クロスポロ(FF/7AT)オンオフ、常に気軽さを伴いながら

クロスポロという生き方

試乗を終え、改めてクロスポロのキャラクターについて考える。

このクルマは、SUVのような無骨さを強調するわけでもなく、かといって普通のコンパクトカーの枠にも収まらない。

街中でも快適に走れ、時には自然の中へ気軽に出かけられる。そんな「自由な移動」を大切にする人に向けた一台だ。

フォルクスワーゲン・クロスポロ(FF/7AT)オンオフ、常に気軽さを伴いながら

内装の質感も、VWらしい作りの良さが感じられる。インパネはシンプルながら質が高く、シートの座り心地も快適。ナビやオーディオの操作系も分かりやすく、ドライバーにストレスを感じさせない設計になっている。

荷室の広さも十分で、後席を倒せばさらに広いスペースが生まれるため、ちょっとしたアウトドアにも対応できる。楽器など、大きな荷物も意外に飲み込んでくれるだろう。

フォルクスワーゲン・クロスポロ(FF/7AT)オンオフ、常に気軽さを伴いながら

ただし、SUVらしい迫力を求める人には物足りなく感じるかもしれない。車高が少し高くなっているとはいえ、本格的なオフロード性能を求めるクルマではない。

その代わりに、舗装路での安定感や軽快なハンドリングを重視している点が、このクルマの個性になっている。

フォルクスワーゲン・クロスポロ(FF/7AT)オンオフ、常に気軽さを伴いながら

2025年の今、SUVという存在は、すっかりわたしたちの生活に定着し、もはや主役を張っているといってもいいくらいになった。

多くのメーカーがSUVらしさを強調したモデルを投入する中で、クロスポロは「ポロの延長線上にあるクロスオーバー」という独自のポジションを貫いている。

カラーを除いて、派手ではないが、実用性と走りのバランスに優れた一台。それこそが、クロスポロが持つ最大の魅力だ。

都会と郊外を自由に行き来し、日常の延長線上に「ちょっとした冒険」を加える。クロスポロは、そんなライフスタイルにぴったりの相棒となるクルマだろう。

SPEC

フォルクスワーゲン・クロスポロ

年式
2012年式
全長
4000mm
全幅
1710mm
全高
1505mm
ホイールベース
2470mm
車重
1130kg
パワートレイン
1.2リッター直列4気筒ターボ
エンジン最高出力
105ps/5000rpm
エンジン最大トルク
175Nm/1550rpm
タイヤ(前)
215/40R17
タイヤ(後)
215/40R17
  • 上野太朗 Taro Ueno

    幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。

    著者の記事一覧へ

メーカー
価格
店舗
並べ替え