フェラーリGTC4ルッソT(FR/7AT)ターボエンジンじゃダメですか?

フェラーリGTC4ルッソT(FR/7AT)ターボエンジンじゃダメですか?

思い描く「ザ・フェラーリ」とはちょっと違う見た目の「GTC4ルッソT」。フェラーリ・フォー〜GTC4ルッソを経てGTC4ルッソTになった系譜をスペックで学び、この車の存在意義がどういった所にあるのかを試乗で見出す。

不思議な形をした「跳ね馬」

フェラーリは、赤か黄色。2ドアで、ペッタンコの幅広。そんなイメージを持つ人にとって、フェラーリGTC4ルッソTは随分違った印象を覚えるだろう。

2ドアであることは同じでも、リアはボコッと膨らみトランクさえある。中を覗くとシートが4座、設えられている。ブレッドバンを思い出した。フェラーリの。

この車の直接的な祖先は、フェラーリ・フォー(FF)まで遡る。(612スカリエッティという声もあるけれど、それとFFは、大きく変わっている)

FFというのは「四座の四駆」を指すということはご存知の方が多いかもしれない。2011年当時は高性能SUV真盛り。これに対しフェラーリが出した答えは「シューティングブレーク」だった。

その後、「GTC4ルッソ」が2016年2月にデビュー。ルッソは「贅沢」の意味。さらに同年9月、このページの主役「GTC4ルッソT」が登場したのだった。

スペックを照らし合わせながら、GTC4ルッソTを読み解いてゆこう。

フォーからルッソTへの系譜

フェラーリ・フォー(FF)〜フェラーリGTC4ルッソTに至るまで、ホイールベースは一貫して2990mmを維持する。全高も1380mmと同値である。

全幅はフォー→GTC4になる際に30mm広がり、GTC4ルッソTは変更なしの1980mm。全長は同じく4910mmから4920mmとなった。

GTC4ルッソTのスリーサイズをまとめると
・全長:4920mm
・全幅:1980mm
・全高:1380mm
・ホイールベース:2990mm
となる。

参考までにポルシェ・パナメーラ・ターボのスリーサイズは
・全長:5050mm
・全幅:1940mm
・全高:1430mm
・ホイールベース:2950mm
およそのサイズ感は伝わっただろうか。

車両重量はフェラーリ・フォーが1790kgであったが、GTC4ルッソでは1920kgまで増えた。それがGTC4ルッソTでは1865kgまで減量された。

減量の理由は、フロントに搭載していた6262cc V型12気筒自然吸気が3855cc V型8気筒ターボになったこと。また、GTC4ルッソまで採用していた、後輪駆動が基本の4WD(フェラーリは4RMと呼び、ルッソは四輪操舵を組み合わせる4RM-Sとなった)が、GTC4ルッソTがFRになったからである。

最高出力は、フォー→GTC4ルッソ→GTC4ルッソTの順に660ps→690ps→610psとなる。

最大トルクは、683Nm→697Nm→760Nmという推移。

これだけでは単純比較にならないのでパワーウエイトレシオ/トルクウエイトレシオを算出してみた。

前者は2.71kg/ps→2.78kg/ps→3.05kg/psと、世代交代をするごとに悪化している。一方、後者は2.62kg/Nm→2.75kg/Nm→2.45kg/Nmと、着実に改善していった。

乗った感じはどうだろう?

見た目に騙されてはならない

シートに腰をおろすと眼前に広がるのはモダン・フェラーリそのもの。

ステアリングにはスイッチ類が多く集まり、メータークラスター中心のレヴカウンター(7500rpmからレッドゾーン)の左右に液晶が据えられる。

エンジンオンはステアリング左下の赤いスイッチボタンで。V12自然吸気エンジンに比べてほんの少し短いクランキングでGTC4ルッソTのエンジンは目覚めた。

音は野太く低い。センターコンソール上の「AUTO」を押して進む。低く唸りながら淡々と7速DCTは変速を重ねる。

どのモードでも乗り心地は結構ハードだ。路面のうねりは素直に拾う。大きな窪みを踏むと、Aピラーの上部がみしりと音を立てることもあった。

ステアリングの反応はこれでもかというほど鋭い。転舵し始めから即座にGTC4ルッソTは反応する。これはスポーツカーだなと思った。見た目とは裏腹に。

マニュアルモードにして、強い加速を試みる。低く野太かったV8ターボサウンドは、低〜中音域へと音階を変える。高音域に切り替わることはない。音量を増しながら、音<加速で実力を見せつける。

ターボであることは明らかに感じる。ドッとトルクが湧き出し、リアから力強く車体を蹴り出すタイプである。過激だ。

きちんとフロントの荷重を意識してやらねば、あるいは中途半端なノーズの向きでコーナーに飛びこむと、終わる。いかにも冷徹に、GTC4ルッソTはその事実を突きつけてきた。

GTC4ルッソTをどう見るか?

見た目に騙されてはいけない。かなり獰猛である。筆者個人はV12自然吸気を試した経験もあるけれど、あちらがエンジンの官能性を味わえるグランドツアラーだとしたら、V8のこちらはグランドツアラーの見た目と、その獰猛さとのギャップに唸らされる「マシン」である。

フェラーリはSUVの発表を目前に控えている(と考えていいだろう)。しかしきっと、百花繚乱のスーパーSUVとは異なる提案をしてくるはずだ。

GTC4ルッソTもまた「多くの人が選ばない」という美学を持ち合わせた、替えの利かない車であることは間違いない。

多くの人がいかない所をあえて選び、それがとびっきりユニークであれば、それだけで所有する理由になるかもしれない。

それともう1つ、大事なことを付け加えておこう。後席は意外なほど広い。後ろに機内持ち込みのスーツケースなら2〜3つは載せられる。そんなフェラーリ、他にない。

SPEC

フェラーリGTC4ルッソT

年式
2017年
全長
4920mm
全幅
1980mm
全高
1380mm
ホイールベース
2990mm
トレッド(前)
1680mm
トレッド(後)
1670mm
車重
1865kg
パワートレイン
3.9リッターV型8気筒ツインターボ
トランスミッション
7速AT
エンジン最高出力
610ps/7500rpm
エンジン最大トルク
760Nm/3000-5250rpm
サスペンション(前)
ダブルウィッシュボーン
サスペンション(後)
マルチリンク
タイヤ(前)
245/35 ZR20
タイヤ(後)
295/35Z R20
メーカー
価格
店舗
並べ替え