〇〇×〇〇の組み合わせないかなぁという貴方。特に輸入車好きへ分かり易くこのクルマを表現する。「国産版ストレート6 BMW e91 323i ツーリング 6MT」
アルテッツァ・ジータ、その生い立ち
スポーツセダンとステーションワゴン、その二つの概念を融合させた車。それがトヨタ・アルテッツァ・ジータだ。
トヨタが1998年に送り出したアルテッツァ(XE10型)は、ライトウェイトFRスポーツセダンとして旋風を巻き起こしたが、その派生モデルとして2001年にデビューしたのがアルテッツァ・ジータだった。
アルテッツァ・ジータは、スポーツ性と実用性を両立した「走りのワゴン」を目指して設計された。
アルテッツァと同じFRレイアウトを採用しながら、広いラゲッジスペースを確保し、より多用途に対応できる車として誕生したのだ。
設計思想は明確で、「ファミリーカーとしての利便性を持ちつつも、スポーティな走りを妥協しない」というものだった。
その中でも、2001年式AS200 Zエディション 6速MTは、ピュアなドライビングフィールを求める者にとっての理想的な選択肢だった。
搭載される2リッター直列6気筒エンジン(1G-FE)は、最高出力160psを発生。過激なスペックではないが、自然吸気ならではの伸びやかさと、FRレイアウトによる素直なハンドリングが魅力だ。
また、1G-FEエンジンはトヨタが誇る名機の一つであり、その耐久性やスムーズな回転フィールも評価が高い。
では、このワゴンが持つ「走り」の実力を、実際にステアリングを握りながら確かめていこう。
走るワゴン、その本領
ドアを開けると、スポーツモデルらしいタイトなコクピットが広がる。
ホールド性の高いバケットシート、ショートストロークのシフトレバー、そして視界の良いメーターパネル。これは単なる「ワゴン」ではない、ドライバーのための「スポーツカー」だ、というメッセージが伝わってくる。
イグニッションをひねると、直列6気筒エンジンのスムーズなアイドリング音が広がる。クラッチを踏み込み、1速にシフトを入れる。ペダルの剛性感はしっかりとしており、シフトフィールもダイレクトだ。走り出せば、そのフィーリングの良さにすぐ気づく。低回転からのトルクは十分で、市街地でも扱いやすい。
だが、このクルマの真価はワインディングロードでこそ発揮される。6000rpmまでスムーズに回るエンジン、しっかりとした足回り、そして理想的な前後重量配分がもたらす安定感。
コーナーに差し掛かるたびに、FRらしい自然な動きが楽しめる。シフトチェンジの感触はカチッと決まり、操作しているだけで満足感が得られる。
リアにはダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用。これにより、ハードなコーナリングでもしっかりと踏ん張り、リアが流れることなくスムーズな旋回を実現する。
さらに、6速MTの恩恵で、ギア選択の自由度が高く、高回転を維持しながらスムーズな加速が可能だ。ブレーキの効きも強力で、制動時の安定感も抜群。まさに「走りを楽しめるワゴン」だ。
念のために申し上げておくが、決してパワフルで速いわけではない。むしろ、パワーは控えめで遅い。だからこそ全開で楽しめる。こういった車、現代にはほぼない。
そして驚くのはその快適性。スポーティな味付けながら、長距離ドライブでも疲れにくい。シートのクッション性やサスペンションのダンピングが絶妙で、バランスの取れたセッティングになっている。
意外にも後席の居住性も確保されており、スポーツワゴンでありながらファミリーカーとしての実用性も十分に備えている。
アルテッツァ・ジータの遺産
試乗を終えた今、このクルマの本質が見えてきた。それは、単なる「スポーツワゴン」ではなく、ドライバーのために作られた「走りの道具」であるということだ。
アルテッツァ・ジータ AS200 Zエディション 6速MTは、現在の市場では稀有な存在になった。FR、6速MT、自然吸気エンジン。
この三拍子が揃った車は、今や数少ない。しかし、その純粋な運転感覚は、スポーツカー好きにとって今なお魅力的だ。
2005年、アルテッツァシリーズは生産終了を迎えた。その後継となるのは、レクサスISへと進化したモデルだ。
アルテッツァの持つ「ライトウェイトFRスポーツ」の精神は、そのまま受け継がれた。
しかし、アルテッツァが持っていた「純粋な走りの楽しさ」は、繰り返しになるが、現代のスポーツカーではなかなか味わえないものになりつつある。
現代の車は電子制御の介入が増え、MT車も減少している。だが、アルテッツァ・ジータは今もなお、純粋なドライビングを求める者にとって、魅力的な選択肢であり続けている。
中古市場では比較的手に入りやすく、チューニングのベースとしても人気がある。
特に6速MTのモデルは価値が高く、エンジンのポテンシャルを引き出す楽しみも大きい。いっぽうでテスト車のようなフルオリジナルの個体はあまり見かけない。
手に入れるなら今が最後のチャンスかもしれない。FRレイアウトと6速MT、そしてストレートシックスの快音を楽しめる希少な一台。
それこそが、アルテッツァ・ジータ AS200 Zエディションの価値なのだ。
この車を操る楽しさを知る者だけが、その真価を理解できる。アルテッツァ・ジータは単なる「実用車」ではなく、走りの歓びを追求したドライバーズカーなのだから。
SPEC
トヨタ・アルテッツァ・ジータ
- 年式
- 2001年式
- 全長
- 4505mm
- 全幅
- 1725mm
- 全高
- 1420mm
- ホイールベース
- 2670mm
- 車重
- 1390kg
- パワートレイン
- 2リッター直列6気筒
- トランスミッション
- 6速MT
- エンジン最高出力
- 160ps/6200rpm
- エンジン最大トルク
- 200Nm/4400rpm
- タイヤ(前)
- 215/45ZR17
- タイヤ(後)
- 225/45ZR17
上野太朗 Taro Ueno
幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。