大寒波に見舞われた今年、例年以上に雪の中をクルマで駆けた方も多いはず。走る上で嫌な思いはされませんでしたか? 思い切って雪国生まれのクルマ、試してみませんか?
革新的なコンセプト
ボルボXC70。このクルマを語るとき、それは単なるステーションワゴンの枠を超えた「冒険者のためのツール」としての存在感を持つと筆者(=上野太朗)は思う。
1997年、初代XC70(当時はV70 XCとして登場)は、ボルボの伝統的なワゴンにSUVの走破性を組み合わせるという革新的なコンセプトを打ち出した。
シティユースとオフロード性能を両立させたその思想は、後のクロスオーバーSUVの先駆けともなった。
初代はV70をベースにしながら、最低地上高を高め、専用のボディプロテクションやAWD(全輪駆動)を搭載。北欧の厳しい冬道を走破するための設計が随所に盛り込まれていた。
その後、2000年には2代目が登場し、XC70として独立した名称が与えられた。
オフロード性能が強化され、耐久性の高い足回りや快適性を向上させた装備を備えることで、さらに「どこへでも行ける」車へと進化した。
そして2007年、3代目XC70(P2プラットフォームをベースにしたモデル)が登場。
このモデルは、従来の洗練されたステーションワゴンとしての利便性を保ちつつ、さらにタフな走行性能を手に入れた。
AWDシステムと最低地上高210mmの高められたクリアランスにより、未舗装路や悪天候下でも優れた走破性を発揮する。
今回試乗するのは、2007年式ボルボXC70。搭載されるエンジンは3.2リッター直列6気筒(B6324S型)。
最高出力238馬力、最大トルク320Nmを発生し、6速ATとの組み合わせにより、スムーズで力強い走行フィールを実現している。
さて、このスカンジナビアの冒険者が持つ本当の実力を確かめるべく、実際にステアリングを握ってみよう。
北欧の洗練が息づいた
ドアを開けると、そこには北欧の洗練が息づいたキャビンが広がる。
ウッドパネルとソフトタッチ素材を組み合わせたインテリアは、質感が高く落ち着きのある雰囲気。同時にスッキリしている。
ボルボが重視するシートの快適性はこのモデルでも健在で、長距離ドライブでも疲れにくい。シートに身を沈めると、ボルボ特有のしっかりとしたホールド感が感じられる。
ワゴンタイプでありながら目線の高さはかなりのもので、それが新鮮だ。また疲れづらいもうひとつのおおきな要因だ。
エンジンを始動すると、3.2リッター直列6気筒の静かな鼓動がキャビンに響く。アクセルを踏み込むと、低回転域からトルクが豊かに湧き上がり、2t近い車重を意識させないスムーズな加速を実現。
6速ATは変速ショックが少なく、どの速度域でも洗練されたフィーリングを保つ。
パワーの盛り上がりはリニアで、都市部のストップ&ゴーから高速道路での巡航まで、安定した走行性能を発揮する。
そしてこのクルマの本領が発揮されるのは、荒れた路面やワインディングロードだ。ハルデックス製AWDシステムは、走行状況に応じて前後トルク配分を最適化し、安定したグリップを確保する。
特に雨や雪道では、その効果を実感できるだろう。また、最低地上高が高められているため、ダートや雪道でもしっかりとした走破性を維持できる。
サスペンションは前ストラット、後マルチリンク。これにより、路面の凹凸をしなやかにいなしつつ、ボディのフラットな姿勢をキープ。
ステアリングフィールはSUVのようにダルではなく、適度な重みとダイレクト感があり、ワゴンらしい軽快な操作性も備えている。
高速道路での巡航性能も申し分ない。
100km/h巡航時のエンジン回転数は約2000rpmと低く、エンジン音や風切り音も最小限に抑えられている。長距離移動でも疲れにくいのは、ボルボならではの快適性の高さによるものだ。
冒険のためのワゴン
試乗を終えた今、このXC70という車が持つ本質を改めて考える。
これは単なる「アウトドア向けワゴン」ではなく、「どんな状況でもドライバーに安心を与える」クルマだ。
XC70の魅力は、「頑丈で壊れにくい」というボルボの哲学にある。ボディ剛性は極めて高く、衝突安全性能もトップクラス。
実際、ユーロNCAPの衝突試験でも最高評価を獲得している。これは、家族や大切な人を乗せるうえで、大きな安心材料となる。
また、ボルボ独自のWHIPS(後部衝突時頸部保護システム)やSIPS(側面衝突防止システム)を備えており、万が一の事故の際も乗員を最大限に保護する設計になっている。
安全装備の充実度は、さすが「安全のボルボ」と呼ばれるだけのことはある。
さらに、この車は長く乗り続けることができる設計がなされている。ボルボ車は20万km、30万kmと走り続ける個体が多く、XC70も例外ではない。
シンプルで頑丈なエンジン設計、錆びにくいボディ、メンテナンスのしやすさ。これらが、長寿命な車としての価値を高めている。
一方でテスト車の走行距離は5万㎞未満。16年を経て、である。
「信頼性、快適性、走破性」ーーこの3つの要素を高次元でバランスさせたボルボXC70。もし、この車に出会う機会があれば、ぜひ一度ステアリングを握ってみてほしい。
その実力を体感したとき、「冒険のためのワゴン」としての真価が見えてくるはずだ。今となってはほとんど「カブる」こともないだろう。大事なことである。
SPEC
ボルボXC70 3.2SE
- 年式
- 2008年式
- 全長
- 4840mm
- 全幅
- 1890mm
- 全高
- 1605mm
- ホイールベース
- 2815mm
- 車重
- 1880kg
- パワートレイン
- 3.2リッター直列6気筒
- トランスミッション
- 6速AT
- エンジン最高出力
- 238ps/6200rpm
- エンジン最大トルク
- 320Nm/3200rpm
- タイヤ(前)
- 235/55R17
- タイヤ(後)
- 235/55R17
上野太朗 Taro Ueno
幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。