フォルクスワーゲン・ゴルフ・カントリー(4WD/5MT)当時の異端児は今もレベチ

大衆車メーカーというのは一般的に老若男女大多数にうけ、大きな市場に売れる見込みのあるモデルを設計開発し、販売するものであろう。貴方はこんなクルマを知っているか?

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境界を越える存在として

フォルクスワーゲン・ゴルフ・カントリーは、まるでタイムカプセルから取り出されたかのような車だ。

1990年代初頭、SUVという言葉がまだ一般的ではなかった時代に、ゴルフ・カントリーはゴルフのコンパクトな車体にリフトアップされた足回りと4WDシステムを搭載し、都市とアウトドアの境界を越える存在として登場した。

その姿を初めて目にした瞬間、まるで昔憧れていた冒険小説の主人公に再会したような感覚に襲われた。

フォルクスワーゲン・ゴルフ・カントリー(4WD/5MT)当時の異端児は今もレベチ

通常のゴルフよりも一回り大きく、高い車高と外装のアンダーガードが、どこにでも行ける頼もしさを感じさせる一方で、そのレトロなスタイルにはどこか愛嬌がある。

サイズは、全長4250mm、全幅1690mm、全高1610mmで、最低地上高は約210mmと、当時としては異例の高さを誇っている。

パワートレインには1.8リッター直列4気筒エンジンが搭載され、最大出力は98psを発生。トランスミッションは5速マニュアルで、4WDシステムはシンクロと呼ばれるビスカスカップリングを採用している。

これにより、滑りやすい路面でも優れたトラクションを実現した。

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ドアを開けると、内装は時代を感じさせるシンプルなデザインだが、控えめな中にも独自の魅力が漂っている。

シートは意外にも快適で、柔らかすぎず硬すぎない絶妙な座り心地が長時間のドライブにも適している。

視界が高いため、運転席からの見晴らしは非常に良い。キーをひねると、エンジンがわりと大きめの音とともに目覚め、低い唸り声を上げる。その瞬間、単なる移動手段としてではなく、特別な旅の相棒としての存在感が車内に満ち溢れた。

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興味深げな目線を感じる

ゴルフ・カントリーを街中で走らせると、その存在感はひときわ際立つ。車高が高いことで他の乗用車とは一線を画し、視界の広さと取り回しの良さが魅力だ。

細い路地や混雑した交差点でも、驚くほど軽快に動く。街路樹が並ぶ細い通りを抜けるたびに、この車が放つ独特のオーラが周囲の視線を引き寄せる。

信号待ちで停車しているときには、歩行者や他のドライバーの興味深げな目線を感じることもしばしばだ。

フォルクスワーゲン・ゴルフ・カントリー(4WD/5MT)当時の異端児は今もレベチ

現代の車と比べれば、燃費性能は控えめで、インターネット上の資料によると約10-12km/Lといった数値だが、これは車の性格を考えれば妥当といえる。

走行性能については、直感的なハンドリングと4WDの安定感が心地よい。低速域でもステアリングは軽快で、運転者が車を思いのままに操れる感覚を与えてくれる。

加速は穏やかで、はっきりいって速くない。最高速度は約160km/hに達するそうだが、そのあたりの速度に達することは一般道では当然むずかしいし、そんな速度で走らせたいという気持ちにいい意味でなれない。

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サスペンションはマクファーソンストラット式を採用しており、やや硬めのセッティングが凸凹のある道路で車体に揺れをもたらすものの、それがまたこの車の個性を際立たせている。

狭い駐車場での扱いやすさも意外で、全体的な車体のコンパクトさが功を奏している。

街中での日常の足としても高い実用性を持ちながら、その存在感はクラシックカー愛好家の心を掴んで離さない。

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自然と向き合っている感覚

資料によると、アプローチアングルは25度、デパーチャーアングルは18度と、オフロード性能を意識した設計が見て取れる。

タイヤはオフロード向けの185/65R15サイズ。ぽよぽよとやわらかく跳ねる。現代のSUVが忘れてしまった冒険心を思い出させるかのようだ。

また、最大積載量は450kgとされており、アウトドアギアや荷物をしっかり積み込むことが可能だ。

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車内に響くエンジン音や風切り音は、現代のSUVのような静粛性はないが、むしろその荒々しさが自然と共鳴しているかのように感じられる。

この車で山道を走ると、ドライバーと車が一体となって自然と向き合っている感覚が生まれる。

車内の快適性よりも、外の景色や地面を感じ取れるその感覚は、現代の車では得がたい貴重な体験だ。

フォルクスワーゲン・ゴルフ・カントリー(4WD/5MT)当時の異端児は今もレベチ

ゴルフ・カントリーは、単なる移動手段ではなく、過去と現在、街と自然をつなぐタイムマシンのような存在だ。

このユニークな車は、特別な一台を求める人々にとって、心を満たしてくれるに違いない。

特に、自然との触れ合いやクラシックな車の魅力を重視する人には、最高のパートナーとなるだろう。数が少ない。価格も高い。それがまたいい。

SPEC

フォルクスワーゲン・ゴルフ・カントリー

年式
1991年式
全長
4250mm
全幅
1690mm
全高
1610mm
ホイールベース
2475mm
パワートレイン
1.8リッター直列4気筒
トランスミッション
5速MT
エンジン最高出力
97ps/5400rpm
エンジン最大トルク
142Nm/3000rpm
タイヤ(前)
185/65R15
タイヤ(後)
185/65R15
  • 上野太朗 Taro Ueno

    幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。

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