コンセプトカーから量産に移った瞬間、何が起きてこうなってしまったのと言いたくなるモデルは多い。メーカーの思惑はあれど、「限りなく近く」を実現した貴重なモデルだ。
思わず目を奪われる
トヨタFJクルーザーを初めて目にすると、その独特のデザインに思わず目を奪われる。
丸目のヘッドライト、スリット状のフロントグリル、そしてスクエアなボディラインは、クラシックなランドクルーザー40系のDNAを色濃く受け継いでいる。
トヨタがこのモデルを初めて発表したのは2003年のデトロイトモーターショーで、そのコンセプトモデルが非常に高い評価を受けたことから、2006年に北米市場向けに市販化が決定した。
日本市場には2010年に登場し、瞬く間にそのユニークなスタイルと堅牢な性能が話題となった。
試乗車のブラックとホワイトの2トーンカラーは、どこかアウトドアの冒険を彷彿とさせる配色だ。
全長4670mm、全幅1905mmという堂々たるサイズ感に加え、215mmの最低地上高は、このクルマが街中だけでなくオフロードも得意とすることを物語っている。
ドアのデザインも特徴的で、後部に観音開きのスーサイドドアを採用しており、見た目の個性だけでなく実用性も兼ね備えている。
室内に目を向けると、水平基調のダッシュボードと大型スイッチ類がアウトドアに適した堅牢な雰囲気を演出しており、まさに「走るギア」といった印象だ。
余裕を持った走り
試乗開始後すぐに、FJクルーザーの持つ力強い走行性能に驚かされる。
このモデルには4.0リッターV型6気筒エンジン(1GR-FE型)が搭載され、最高出力は276ps、最大トルクは380Nmを発揮する。
パワフルなエンジンは、6速ATとの組み合わせで街中から高速道路まで余裕を持った走りを実現している。
0-100km/h加速は約7.8秒と、このサイズのSUVとしては十分な性能だ。街中での運転では、車体の大きさを心配する声も聞くが、視界は高く広いため、運転感覚は意外とスムーズだ。
最小回転半径は6.2mと少し広めだが、それでもステアリングは軽く、ストレスを感じる場面は少ない。
もうひとつ驚いたのは、ステアリングを切った瞬間、アクセルを踏んだ瞬間に、ギュンと勢いよく反応する点。もう少し鈍重なイメージであっただけに、楽しい気持ちにもなった。
サスペンションはフロントにダブルウィッシュボーン、リアに4リンクコイル式を採用しており、オンロードでの快適性も確保されている。
一方で、ロードノイズや風切り音はSUVらしく少し大きめだが、この無骨なキャラクターが逆に「走ることの楽しさ」を思い出させてくれる。
さらに、助手席の前に設置されたアシストグリップや防水仕様のフロアマットは、「いつでもどこでも使えるクルマ」というFJクルーザーの思想を体現している。
もっと先へ行きたい
FJクルーザーの真価を発揮するのは、やはりオフロードでの走行だ。試乗中、近郊の林道にちょっとだけ足を踏み入れると、その本格的な四輪駆動性能に感心させられた。
この車両には、パートタイム式の4WDシステムが搭載され、センターデフロックやA-TRAC(アクティブトラクションコントロール)といった装備が標準で付いている。
いざ急勾配の坂道やぬかるんだ路面でも、タイヤがしっかりと地面を捉え、どんな地形でも確実に前進する力強さを見せつけてくれるだろう。
アプローチアングル34度、デパーチャーアングル31度、そしてブレークオーバーアングル27.5度という数値は、オフロード走行における抜群の性能を示しており、岩場や段差もスムーズに乗り越えることが可能だ。
さらに、285/70R17の大型タイヤがグリップ力と衝撃吸収性を発揮し、どんな地形でも安心感を与えてくれる。
試乗中、まるで車と自然が一体となるような感覚を覚え、「もっと先へ行きたい」という冒険心が湧き上がってきた。
このFJクルーザーは単なるSUVではなく、ドライバーに「新しい道」を切り開く楽しさを提供する真の相棒だ。
舗装された道の終わりこそが、FJクルーザーにとっての出発点なのだと実感させられる。
とはいえ、である。この見た目、ストリートにおいても、所有欲を満たし、憧れの視線さえ感じられるはずだ。ファッションの一部として所有するのもいいだろう。
SPEC
トヨタFJクルーザー
- 年式
- 2014年式
- 全長
- 4635mm
- 全幅
- 1905mm
- 全高
- 1840mm
- ホイールベース
- 2690mm
- 車重
- 1940kg
- パワートレイン
- 4リッターV型6気筒
- トランスミッション
- 6速AT
- エンジン最高出力
- 276ps/5600rpm
- エンジン最大トルク
- 380Nm/4400rpm
- タイヤ(前)
- 265/70R17
- タイヤ(後)
- 265/70R17