「ロータス以外の趣味車なんて考えられない」と豪語するファンは多い。言うまでもないが「万人受け」するクルマではない、しかしながらその表現は最高の誉め言葉だろう。
軽量な2シータースポーツカー
ロータス・エリーゼは、ロータス・カーズが製造する軽量な2シーターのスポーツカーだ。
名称は、当時ロータスを所有していた会社ブガッティの会長の孫娘に由来している。
1996年に初代が登場し、軽量なボディ構造とドライビングフィールで注目を集めた。
エリーゼの最大の特徴は、極端に軽い重量にある。車両重量はわずか約700kg。アルミ製のモノコックシャシーを採用することでこの軽量化を実現した。
この設計は、高い剛性を保ちながら軽量化を図り、優れたハンドリング性能と燃費効率に直結する。
エリーゼのエンジンは、発売当初はローバー製の1.8リッター直列4気筒エンジンが搭載されていた。その後、トヨタ製のエンジンが採用され、さらに高性能なバージョンも登場した。これにより、信頼性とパフォーマンスが向上している。
歴史的に見ても、エリーゼはロータスブランドにとって成功を収めたモデルであり、ロータスの販売を再び活気づけた。
またエリーゼはロータスのブランド理念である「軽量化と運動性能の追求」を象徴する車でもある。
2021年には、ロータスがエリーゼの生産終了を発表。その理由は、より近代的な電動化モデルへとシフトするためだった。
しかし、エリーゼはそのシンプルさと運転の楽しさから、世界中で愛されるスポーツカーとしてその名を残しつづけるだろう。
生産終了後も、中古車市場やクラシックカー市場で根強い人気を誇り、軽量スポーツカーのアイコンとしての地位を確立している。
運転を楽しむための装備のみ
今回試乗するのは2011〜2021年まで販売された3代目だ。
大枠の見た目こそ変わらないけれど、ヘッドライトユニットが1つにまとめられ、モダンスーパーカーのような印象を感じる。
しかし乗り込むと、そこはやはりロータスのスポーツカーそのものだ。太いサイドシル、むき出しのアルミ。ラグジュアリーとは無縁。運転を楽しむための最低限の装備が、徹底して吟味されたすえに残されている、といった印象だ。
テスト車の「スポーツ」というグレードは2015年に追加された。エスプリが冠していた「スポーツ」を復活させたかたちで、ベースモデルから軽量化が図られている(10kg減の866kg)。
インテリアには新たに軽量スポーツシートを設定。インテリアトリムにはレザーやアルカンターラに加え、クラシックタータンをラインナップしていた。
ボディーカラーは「ソリッド・レッド」「ソリッド・イエロー」「レーシング・グリーン」「メタリック・ブルー」「メタリック・シルバー」「メタリック・ホワイト」「メタリック・グレイ」「メタリック・オレンジ」「メタリック・ブラック」「エリーゼ・グレイ(リア・ディフューザーはマット・ブラック)」の全10色が展開された。
タイヤサイズは前が175/55 ZR16、後ろが225/45ZR17。オプションで鍛造アルミホイールが用意されていた。
スポーツ・モードが標準装備となっており、「DPM(ダイナミック・パフォーマンス・マネージメント)の設定値を減少させ、アンダーステア検出時にホイールスリップを可能にし、スロットルレスポンスの減少を無くすことにより、さらに研ぎ澄まされたドライビング体験を実現しています」とコメントしている。
腕がなければ、ましてや一般道ではわかるまいが(笑)
さらに、ビルシュタインのスポーツ・ダンパーが備わることを明言している。
行為そのものを純粋に楽しむ
RESENSE(レセンス)メディアとしては、2022年にロータス・エリーゼ(2代目)に試乗して以来。
試乗が待ち遠しかった。
キーの挿入口を兼ねたボタンを押して、彫りの深い軽いドアを開けると、先述のとおり、びっくりするほど無機質なコックピット(という表現が適切だろう)が見える。
グッと背中を曲げて、まずはお尻から、太いサイドシルをまたぐようにシートに腰を下ろす。そのあと両足を折り曲げて体をねじ込む。独特の作法。エリーゼに乗っている実感が湧く。
キーをひねるとエンジンが目覚める。エンジン音自体にドラマがない。イギリス車らしいところかもしれない。
冬、冷えきったシフトノブを、短いストロークで1速にインサート。アクセルもクラッチも、大げさではなく1mmの動作にヒリリと反応する。
重くて小さなハンドルを動かす行為はまるでカートマシンに乗っているかのよう。繰り返しで恐縮だが、そのひとつひとつの行為が、すなわちエリーゼに乗ることなのだと思う。人を選ぶ。環境を選ぶ。
走らせると望外に乗り心地がいいことに気づく。
当たり前だけれどマイバッハのようにふわふわではない。車体全体がしなる。あたりはマイルドで、その後の動きに制約はあるけれど、車体全体がしなりながら衝撃を受け止めているように感じる。
ステアリングもミリ単位。ノーズの動きもミリ単位。気づくと真剣になって運転している。運転するという行為そのものを純粋に楽しんでいる。
試乗前は、せっかくだから峠にいきたい。欲を言えばミニサーキットを走ってみたいと思っていたけれど、RESENSEの大分のギャラリーを出て、最初の角を曲がったときには、もう夢中になっていた。
この車があれば、毎週末を待ちきれないだろう。明日は乗るぞ。酒を控えよう。もっとうまくなりたい。すこし腕力を鍛えたいな。ドライブ中心の思考、エリーゼ中心の生活になるに違いない。
万能じゃないからこそ、ピュア。エリーゼのある生活に憧れている自分がいる。
SPEC
ロータス・エリーゼ・スポーツ
- 年式
- 2017年式
- 全長
- 3800mm
- 全幅
- 1720mm
- 全高
- 1130mm
- ホイールベース
- 2300mm
- 車重
- 866kg
- パワートレイン
- 1.6リッター直列4気筒
- トランスミッション
- 6速MT
- エンジン最高出力
- 136ps/6800rpm
- エンジン最大トルク
- 160Nm/4400rpm
- タイヤ(前)
- 175/55ZR16
- タイヤ(後)
- 225/45ZR17